極地彷徨―北インド古典音楽 & 菌類―

《 Sarangi Live Info 》
2017/5/5 (fri) at 三軒茶屋   ●2017/5/20 (sat) at 浜松   ●2017/5/21 (sun) at 愛知県   ●2017/6/3 (sat) at 町田

サーランギ Q & A

sarangi QA


サーランギ教室開講を正式に告知させていただき、ありがたいことに早速体験レッスンのご予約をいただいています。
引き続き、興味のある方のお問い合わせお待ちしております!


さて、サーランギは演奏者が少ないためか実体験に基づいた経験談が未だに少なく、「難しい」「痛い」といったマイナスイメージが妙に誇張さているようなふしがあります。
しかし、これまでに複数の楽器をかじり、現在サーランギ奏者として活動している身からすると、サーランギは複雑な構造とは裏腹に演奏法は思った以上にシンプルで、他の楽器と比べて最初のハードルは決して高いとは思いません。
また、弦を押さえる指が痛いという面も誤解があります。

そこで、サーランギに関してよく訊かれる疑問をまとめてみました。
レッスンを受けようか検討している方の参考になれば幸いです。
他にも質問などある方は遠慮なくコメント欄からお問い合わせ下さい!



・弦がたくさんあって難しそう。


弦は全部で40本近く張ってありますが、実際に弓で擦って弾くのは3本だけで、バイオリンの4本より少ないです。残りの弦は共鳴させるためだけの弦なので、基本的に演奏中は触る必要がありません。弦が多いから演奏が難しい、ということはありません。


・約40本の弦、全てチューニングするの?


はい、全てチューニングします。この点は手間がかかる楽器といえるかもしれません。ですが、チューニングの構造自体はシンプルで、基本的な演奏ができるようになると、必然的にチューニングも身に付きます。チューニングが合ったときの響きは素晴らしいもので、楽器自体を気に入れば、こうした手間にも愛着を感じます。


・弓を使う楽器は全くやったことがないのだけど、、、


弓を使って音を出すこと自体はそもそも難しいことではありません。弓と弦を擦り合わすという動作は慣れないと難しそうに見えますが、実際にはシンプルな動きです。(もちろん突き詰めていくと奥は深いですが)。「音を出す」という最初のハードルは決して高くないため、音楽経験の全くない方もぜひ体験していただきたいです。


・演奏しているときに指が痛いと聞くが?


サーランギは爪の付け根付近で弦を押さえるため、痛いというイメージを持つ人が多いようですが、ある程度練習を重ねた時点では痛みは全くありません。ギターやバイオリンと同じように、習い始めのみ痛みを感じることがあるということです。練習するにつれ正しい力加減が身に付き、また、指の押さえる箇所が硬くなってきますので、そうなれば痛みは一切なくなります。シタール、フォークギターは自分も取り組んでいた時期がありますが、これらの楽器と比べて痛みの程度も決して大きくはありません。
なお、爪に弦を押さえた跡がついてしまうのがイヤという方には、爪を使わないように第一関節と爪の間の皮膚の部分を当てるようにサーランギを調整することもできます。
指の負担については過去に書いたものがありますので、こちらもご覧ください。


・すごい速弾きをするのを見たことがあるけど、体に負担はないの?


西洋のバイオリンは弦を押さえる左手をねじるように持つ姿勢から、腱鞘炎など様々な故障に悩まされる演奏家が多いことが知られています。これに比べ、サーランギは構えが自然体で、腕や首の負担はほとんどありません。また、バイオリンの弦は約5kg程の張力があり、これを上から押さえるため指に負担がかかりますが、サーランギの場合は弦を上から押さえるのではなく、横から触れるだけで音階を変えることができるので、張力をほとんど感じずに演奏することができます。つまり速弾きをしていても腕も指もほとんど力は要らないのです。言い方を変えれば、サーランギは非常に速弾きに適した楽器ともいえます。


・サーランギってどのくらいの重量?


ちゃんと測ったことはありませんが、楽器にもよりますが2kg~5kgくらいでしょうか。インド楽器の中では軽量でコンパクトな部類といえます。僕の場合、近場であればソフトケースに入れて背中に背負って移動しています。登山リュックやテニスラケットのケースに入れて移動する方もいますよ。


・サーランギの演奏家って本当に少ないの?


シタール、タブラといった楽器から比べると、演奏者が少ないのは確かです。しかし最近は故Sultan Khanなどの活躍でその存在が知られ、注目を浴びるようになってきました。特に外国人で取り組む人が増えていると思われ、僕の師匠にも多くの外国人生徒がいます。


・楽器の入手について


サーランギの演奏家の減少よりも深刻なのが、サーランギの制作者の減少のほうだと思っています。信じられないような話かもしれませんが、現在インドで一般的に売られているサーランギの8割方は、サーランギを弾くことができない職人が作っています。そのため一見楽器の造りはよくても、ディテールを見ると演奏に適していないものが多く見受けられます。教室においては、僕自身が細部にかけて調整した、演奏会でも使用できるクオリティの楽器のみを提供します。


・実際に習う場合になにか準備はいりますか?


特に必要ありませんが、胡坐のかける服装でお越しください。また、左手の爪は伸びていると正確に弦を押さえることができないので、できるだけ切っておいたほうがよいです。体験レッスンは楽器レンタル込みなので、手ぶらでお気軽にお越しください!



サーランギ教室について詳細はこちら

  1. 2017/04/04(火) 19:13:52|
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万象房 サーランギ教室開講!

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音楽経験不問! インド音楽に興味のある方はもちろん、珍楽器愛好家、倍音マニアも要注目のインドサーランギ教室!


この度ご縁をいただいて町田・万象房にてサーランギ教室を開講させていただくことになりました。
万象房は各種民族楽器の教室を開講しており、インド楽器では国分あきこさんのシタール教室、池田絢子さんのタブラ教室に続く3番目の教室となります。

サーランギはインド楽器のなかでも知名度が比較的低く、演奏家も少ない楽器ですが、とにかく一度生で聴いていただきたい素晴らしい音色です。
複雑な構造の割に、実際に弓で擦る弦は3本だけで、基本的な演奏法の習得は決して難しくありません。
本格的にインド古典音楽を学びたい方はもちろん、取り組んでいる音楽にサーランギを取り入れてみたい方、なんとなく変わった楽器を始めてみたい方…、どなたも大歓迎です。

レッスンは現在のところ、原則個人レッスンのみとなります。
日程は固定ではなく、相談して決めるシステムなので融通がききます。
楽器の入手についても相談に乗ります。
ご興味のある方は以下の万象房の詳細ページをご覧の上、万象房、もしくはこのブログの非公開コメントでもどしどしお問い合わせください。


●万象房
194-0022 東京都町田市森野1-34-18ユニオンビル5F
℡ 042-851-8875
地図(Google Map)
http://musictown2000.sub.jp/banshowboh/


教室について詳細はこちら


  1. 2017/03/27(月) 20:10:12|
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サーランギの弦の押さえ方と指の負担について

sarangi finger 02

上の写真のようにサーランギはギターやバイオリンのように弦を上から指先で押さえるのではなく、爪の甘皮(付け根)を横から弦に押し当てるような形をとります。
この押さえ方は爪に負担を与えるため、プロの演奏者の爪は独特の跡がついていることが多いです(下の写真参照)。
このことは、サーランギが演奏するのに非常に苦痛を伴う楽器であるという印象を与え、演奏者が減っているということの一因としてもよく挙げられています。

しかし実際のところ、痛いのはギターと同じ、習い始めだけ、です。
慣れてしまえば演奏に痛みは伴いません。

習い始めは弦を押さえる力の具合がわからないので、無駄に指に負担をかけてしまいがち。
この時点ではそれなりに痛みを感じることが多いのは確かです。
しかし、ある程度演奏に慣れてくると、無理な力をかけなくてもほんの少し触れるだけで音が変化するということが実感として掴めてきます。
その頃にはギターだこと同じように、爪の付け根の甘皮部分が固くなってきます。
ここまでいくと、もうほとんど痛みを感じることはありません。


sarangi finger 01

写真は師匠の指。
弦は爪と甘皮の両方に触れるため、爪に傷跡がつき、甘皮部分は皮膚が弱冠盛り上がって固くなっています。
サーランギ演奏者は、演奏量が多いと爪や甘皮が変形することは事実です。
しかしこうした跡がつくからといって、演奏中に痛みを感じているわけではありません。

***

最近の自分は昔と比べると、猛練習を続けても爪の凹みがあまりつかない日が続いていました。
これはなぜかというと、ここ数年は繊細な音を目指し、かなり細い弦を使っていたことが一番の要因。
また、指への負担が大きいガマクなどの奏法をあまり使わなかったことでしょうか。

指への負担は弦の種類や奏法によっても変るということです。
実際に熟練の演奏家でも、あまり指に押さえた痕跡のない人も多くいます。
指への負担を不安に思う方は、習い始めだけでも、細く滑らかな弦を使うのも手かもしれません。

私の師匠はサブリ・カーンの弟子であるだけに、太めの弦を好み、繊細でいて力強さを持ち合わせた演奏をします。
その性格が爪によく表れていると言えるでしょう。
日本で理想の音を追い求めていたばかりの自分には、久しく忘れていたこの音の存在感に衝撃を受け、今は習い始めのころに戻って弦も太めのものに戻し、奏法も師匠のスタイルを必死で学んでいます。

***

なお、弦の押さえ方で一つ書き忘れましたが、爪を一切弦に当てず、爪と第一関節の間の皮膚の部分だけを使う演奏家もいます。

sarangi finger 03

これは比較的新しいスタイルで、当然爪は一切変形しません。(弦の当たる皮膚の部分は跡がつきますが)
伝統的には甘皮部分を使うスタイルが使われてきましたが、現在ではどちらが正しいということはありません。
どちらのスタイルにも名演奏家がおり、新しいスタイルもすでに定番の一つになっています。
写真のように、生まれつき爪が小さい人は、必然このスタイルを選ぶことも多いようです。


sarangi finger 04
  1. 2013/11/30(土) 18:30:43|
  2. サーランギ、インド音楽|
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サーランギと伴奏について

kathak sarangi

カタックダンスの伴奏で師匠が出演。
通常カタックではタブラを前方、サーランギは後方に配置されるのが一般的。


今まで5年ほど日本にいて独学でサーランギを学んでいましたが、インドに来て徹底的に思い知らされることがあります。
それはサーランギはインドではやはり伴奏楽器であること。
そしてプロは皆、ソロ演奏以上に伴奏のための独自の技術を持っていることです。


pakwaji soro sarangi

パカワージのソロ演奏のための伴奏としてサーランギが出演。
サーランギはひたすらナグマを繰り返す。単純ながら、技術的には大変難しい。


例を挙げると、まず第一にナグマのバリエーションでしょうか。
ナグマというのは、カタックダンスやタブラソロの伴奏のためのひたすら繰り返して弾くメロディのことですが、師匠にこのメロディを教えてと頼むと、どのラーガの、どのターラの、どのラヤでも美しいメロディをすぐに弾いてみせます。
すごいレパートリーの数です。
また、ナグマは単純に同じメロディを繰り返すだけではありますが、打楽器の演奏に合わせて柔軟にテンポを変えることも要求されるため、実際のパフォーマンスでは高度な技術を要求されます。


vocal sarangi

ボーカルのアカンパニーで出演のKamal Ahmed ji。
女性ボーカルでは特殊なチューニングをすることが多い。


そして次にボーカルの伴奏での「タド」。
通常、男性ボーカルはCやC#といったキーが多く、サーランギの伴奏はなんとか通常通りのチューニングでいけますが、女性ボーカルの場合、AやGといった非常に低いキーとなり、通常のチューニングでは弦が緩くなりすぎるため、特殊なチューニングをすることがあります。
このチューニング(での演奏)を「タド(タート)」といいます。
(それに対照的に通常のチューニングは「チャールガ」というそう)。
タドのチューニングを簡単に説明すると、サーランギの主弦は3本あり、高音の弦の開放弦をSaの音とするのが通常のチューニングですが、タドの場合、中音(3本のうちの真ん中)の弦をSaとします。
よって普段弾いている押さえ位置が全く変わってくるわけで、最初は非常に混乱します。
まあしかし、ピアノやハルモニウムなどでも同じようなことをやっているわけで、慣れといえばそれまでなのですが、これまたラーガを問わず、見事にタドを弾きこなすプロはさすがだなと感じ入る次第です。
ちなみにタドは基本的に女性ボーカルの伴奏専用ですが、ツムリ等のソロ演奏などで使う奏者もいます。

プロのサーランギ奏者は、こうした伴奏に従事するのが実際の仕事であり、ソロ演奏の発表の機会は稀です。
しかしソロでも素晴らしい演奏ができるのは、一つには、こうした伴奏で培った技術が体にしみついているからなのではと思います。


murad ali, ram kumar mishra

2013年9月、デリーにて。ソロのパフォーマンスをするMurad Ali。


Murad Aliは若手では最も注目されているサーランギ奏者の一人。
当然、彼の場合でもほとんどは伴奏に従事していますが、大舞台でのソロ演奏の機会を持つ貴重な存在です。
このような演奏家がどんどん出てくればいいのですが。

  1. 2013/10/20(日) 05:55:33|
  2. サーランギ、インド音楽|
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サーランギ彩色写真

dancers  sarangi 01


ムンバイのWahidさんのお店で購入した彩色写真(プリント)。
彩色写真は日本では明治時代に多く出回ったようですが、これもその頃のものでしょうか。

真ん中の女性3人は踊り子さん。
後ろの男性3人はよくわかりませんが、両端の2人は伴奏者で、サーランギを持っています。
このようにサーランギは踊りや歌の伴奏楽器として使われてきたわけで、当時ソロ演奏の楽器としてみなされることはほとんどありませんでした。

この写真で注目すべきは、サーランギを立った状態で持っていること。
通常サーランギは地べたに座って構えるので、これを見たときは驚きました。

サーランギ属の楽器には少なからず立って演奏するものもあり、例えばネパールに行くとバスの中にサーランギ(写真のサーランギとは全く違う形)を携え、立ったまま演奏し、お金を集める大道芸人が多くいます。

しかし、写真のサーランギは一般的にインド古典音楽で使うサーランギであり、立って演奏するのは見かけたことがありません。

これは面白い、と早速真似してみたところ、なかなかうまい具合に楽器を固定できず悪戦苦闘しましたが、なんとか演奏できるようになりました。
一度このスタイルでライブにも出演。
立って演奏するのはなんだか気分が上がります。

ただ、やってみてわかったことですが、写真の状態では楽器を固定できず、バランスが崩れ、演奏には支障がでるはずです。
となると、この写真は撮影のため、あえてこのようにポーズをつけたのかな…と推測していますが、どうでしょう?

サーランギの歴史について自分は不勉強なので、どなたかご存知の方がいればご教授願いたいです。


〈追記〉 
他の古い写真や絵画によると、実際にこのように立ってサーランギを演奏することは少なからずあったようです。
また現在でも、パンジャーブのdhadiというシク教徒の演奏する音楽では、立ってサーランギを演奏することが一般的です。

  1. 2012/04/25(水) 00:29:42|
  2. サーランギ、インド音楽|
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