極地彷徨―北インド古典音楽 & 菌類―

《 Live Information 》  ●2017/11/19 (sun) at 町田

第3回サーランギ取材報告

ghulam sabir khan, murad ali, abdul rahman

先日の取材は今回のインド滞在の中でも最も大きなイベントと言ってよいかもしれません。
その相手は、Ustad Ghulam Sabir Khan saheb(中央)。
そして、そのご子息に当たるのが、なんと前回の記事で紹介したMurad Ali(右)。
親子揃っての取材が実現しました。
タブラは前々回もお願いしたAbdul Rahmanです。



ghulam sabir khan

現在のデリーで活躍するサーランギ奏者の多くがモラダバード・ガラナ(流派)に属しますが、Ghulam Sabir Khanは、あのUstad Sabri Khan sahebに次ぐ、モラダバード・ガラナの大御所といっていい存在。
僕の師匠のMohd. Nasir Khanをはじめ、現在活躍するのモラダバード・ガラナの多くの奏者が彼の指導を受けています。
話してみると実に嫌みのないフランクな方で、慕われているのもわかります。



昔のソロ演奏の貴重な動画。
Ghulam jiは、現在ではそれほど多くのコンサートには出演しておらず、ましてやソロを聴く機会は滅多にありません。感激です。
ちなみに、現在ならまだしも一昔前までは、よほど高名なサーランギ奏者でさえ、ソロのCD(当時はLP)を発売するということはまずありませんでした。
サーランギに関してはソロ音源を発表できるのはRam Narayan jiなどのごく一部の奏者だけ。
よってデリーのサーランギ奏者の源流の一つともいえる演奏家のソロ演奏を録音できたことは大変意義深いものだと感じています。



murad ali

そしてそのご子息、Murad Aliはインド国内のみならず、海外のレーベルからもCDを出しており、国際的に活躍する若手サーランギ奏者として注目の人。



そもそも今回の取材は知られていないサーランギ奏者、つまりCDなどが一般的に手に入らない奏者を取材するのが目的の一つなわけで、彼の場合それには当てはまらないわけですが、彼のサーランギには昔から非常に惹かれていたため取材を申し込みました。
贅沢を聞いてもらい、まだCDに吹き込んでいないラーガを弾いていただくことも叶いました。

以下、Murad Aliのofficial websiteです。
http://www.sarangisitar.com/muradali/index.html

また、ソロのほかに親子揃っての合奏で弾いてもらったThumriは、取材のことなど忘れてしまうほど素晴らしい演奏だった。
本当に夢のような一日でした。



さて、今回の取材の成果をどのように形に残すかも考え始めています。
どなたかよい案があればぜひご助言ください。

  1. 2013/10/31(木) 23:10:36|
  2. インド2013|
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サーランギと伴奏について

kathak sarangi

カタックダンスの伴奏で師匠が出演。
通常カタックではタブラを前方、サーランギは後方に配置されるのが一般的。


今まで5年ほど日本にいて独学でサーランギを学んでいましたが、インドに来て徹底的に思い知らされることがあります。
それはサーランギはインドではやはり伴奏楽器であること。
そしてプロは皆、ソロ演奏以上に伴奏のための独自の技術を持っていることです。


pakwaji soro sarangi

パカワージのソロ演奏のための伴奏としてサーランギが出演。
サーランギはひたすらナグマを繰り返す。単純ながら、技術的には大変難しい。


例を挙げると、まず第一にナグマのバリエーションでしょうか。
ナグマというのは、カタックダンスやタブラソロの伴奏のためのひたすら繰り返して弾くメロディのことですが、師匠にこのメロディを教えてと頼むと、どのラーガの、どのターラの、どのラヤでも美しいメロディをすぐに弾いてみせます。
すごいレパートリーの数です。
また、ナグマは単純に同じメロディを繰り返すだけではありますが、打楽器の演奏に合わせて柔軟にテンポを変えることも要求されるため、実際のパフォーマンスでは高度な技術を要求されます。


vocal sarangi

ボーカルのアカンパニーで出演のKamal Ahmed ji。
女性ボーカルでは特殊なチューニングをすることが多い。


そして次にボーカルの伴奏での「タド」。
通常、男性ボーカルはCやC#といったキーが多く、サーランギの伴奏はなんとか通常通りのチューニングでいけますが、女性ボーカルの場合、AやGといった非常に低いキーとなり、通常のチューニングでは弦が緩くなりすぎるため、特殊なチューニングをすることがあります。
このチューニング(での演奏)を「タド(タート)」といいます。
(それに対照的に通常のチューニングは「チャールガ」というそう)。
タドのチューニングを簡単に説明すると、サーランギの主弦は3本あり、高音の弦の開放弦をSaの音とするのが通常のチューニングですが、タドの場合、中音(3本のうちの真ん中)の弦をSaとします。
よって普段弾いている押さえ位置が全く変わってくるわけで、最初は非常に混乱します。
まあしかし、ピアノやハルモニウムなどでも同じようなことをやっているわけで、慣れといえばそれまでなのですが、これまたラーガを問わず、見事にタドを弾きこなすプロはさすがだなと感じ入る次第です。
ちなみにタドは基本的に女性ボーカルの伴奏専用ですが、ツムリ等のソロ演奏などで使う奏者もいます。

プロのサーランギ奏者は、こうした伴奏に従事するのが実際の仕事であり、ソロ演奏の発表の機会は稀です。
しかしソロでも素晴らしい演奏ができるのは、一つには、こうした伴奏で培った技術が体にしみついているからなのではと思います。


murad ali, ram kumar mishra

2013年9月、デリーにて。ソロのパフォーマンスをするMurad Ali。


Murad Aliは若手では最も注目されているサーランギ奏者の一人。
当然、彼の場合でもほとんどは伴奏に従事していますが、大舞台でのソロ演奏の機会を持つ貴重な存在です。
このような演奏家がどんどん出てくればいいのですが。

  1. 2013/10/20(日) 05:55:33|
  2. サーランギ、インド音楽|
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サーランギ取材 再び!

kamal ahmed, amir khan, arshad khan

やっと第二回目のサーランギ奏者取材を行いました。
今回はUstad Kamal Ahmed(中央)と、そのご子息Amir Khan(右)。

Kamal Ahmed jiはデリーのボーカルやカタックの大舞台でたびたびお呼びのかかる奏者で、5年前から憧れていた奏者です。
今回のデリー滞在も足繁くコンサートに通ってますが、毎回舞台上での演奏を見ている方なので、間近にその演奏を見ることができるというのは感無量です。
各ソロ演奏に加え、親子揃っての演奏も披露していただき、素晴らしい取材になりました。

タブラはなんとあのAhmed Jan Thirakwaの孫に当たるArshad Khan。
若いですが、腕前は圧巻です。

前回はタンプーラマシンを使ったのですが、今回は知り合いの楽器屋でタンプーラを借りてきて、しっかり生音で録音しました。
ちなみに自分が弾いたのですが、実際に伴奏に参加するのは初めてで、正しい運指なども教えてもらい非常によい経験になりました。

さて、取材後は録音の編集作業に入るわけですが、いかんせん経験が少なく苦戦してます。
しかし演奏者にヘッドフォンで録ったばかりの録音を聴いてもらうと、音質に驚いてくれ、さらに違うラーガを演奏してくれることもあり、こちらとしてもやる気が出ます。
録音、マスタリングを含めて、プロの演奏に見合ったものを成果に残したいものです。

また報告します。

  1. 2013/10/15(火) 03:47:19|
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