極地彷徨―北インド古典音楽 & 菌類―

《 Live Information 》  2017/7/29 (sat) at 町田    ●2017/11/19 (sun) at 町田

サーランギと伴奏について

kathak sarangi

カタックダンスの伴奏で師匠が出演。
通常カタックではタブラを前方、サーランギは後方に配置されるのが一般的。


今まで5年ほど日本にいて独学でサーランギを学んでいましたが、インドに来て徹底的に思い知らされることがあります。
それはサーランギはインドではやはり伴奏楽器であること。
そしてプロは皆、ソロ演奏以上に伴奏のための独自の技術を持っていることです。


pakwaji soro sarangi

パカワージのソロ演奏のための伴奏としてサーランギが出演。
サーランギはひたすらナグマを繰り返す。単純ながら、技術的には大変難しい。


例を挙げると、まず第一にナグマのバリエーションでしょうか。
ナグマというのは、カタックダンスやタブラソロの伴奏のためのひたすら繰り返して弾くメロディのことですが、師匠にこのメロディを教えてと頼むと、どのラーガの、どのターラの、どのラヤでも美しいメロディをすぐに弾いてみせます。
すごいレパートリーの数です。
また、ナグマは単純に同じメロディを繰り返すだけではありますが、打楽器の演奏に合わせて柔軟にテンポを変えることも要求されるため、実際のパフォーマンスでは高度な技術を要求されます。


vocal sarangi

ボーカルのアカンパニーで出演のKamal Ahmed ji。
女性ボーカルでは特殊なチューニングをすることが多い。


そして次にボーカルの伴奏での「タド」。
通常、男性ボーカルはCやC#といったキーが多く、サーランギの伴奏はなんとか通常通りのチューニングでいけますが、女性ボーカルの場合、AやGといった非常に低いキーとなり、通常のチューニングでは弦が緩くなりすぎるため、特殊なチューニングをすることがあります。
このチューニング(での演奏)を「タド(タート)」といいます。
(それに対照的に通常のチューニングは「チャールガ」というそう)。
タドのチューニングを簡単に説明すると、サーランギの主弦は3本あり、高音の弦の開放弦をSaの音とするのが通常のチューニングですが、タドの場合、中音(3本のうちの真ん中)の弦をSaとします。
よって普段弾いている押さえ位置が全く変わってくるわけで、最初は非常に混乱します。
まあしかし、ピアノやハルモニウムなどでも同じようなことをやっているわけで、慣れといえばそれまでなのですが、これまたラーガを問わず、見事にタドを弾きこなすプロはさすがだなと感じ入る次第です。
ちなみにタドは基本的に女性ボーカルの伴奏専用ですが、ツムリ等のソロ演奏などで使う奏者もいます。

プロのサーランギ奏者は、こうした伴奏に従事するのが実際の仕事であり、ソロ演奏の発表の機会は稀です。
しかしソロでも素晴らしい演奏ができるのは、一つには、こうした伴奏で培った技術が体にしみついているからなのではと思います。


murad ali, ram kumar mishra

2013年9月、デリーにて。ソロのパフォーマンスをするMurad Ali。


Murad Aliは若手では最も注目されているサーランギ奏者の一人。
当然、彼の場合でもほとんどは伴奏に従事していますが、大舞台でのソロ演奏の機会を持つ貴重な存在です。
このような演奏家がどんどん出てくればいいのですが。

  1. 2013/10/20(日) 05:55:33|
  2. サーランギ、インド音楽|
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