極地彷徨―北インド古典音楽 & 菌類―

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ロブスターマッシュルーム

カナダの茸01

カナダの菌友Eさんより、カナダ産の茸を送っていただきました。
荷物を開けてみると、風呂敷にくるまれた見慣れぬ形の茸たち…。
全てEさんが山で採って、乾燥させた自家製です。
キノコ柄の風呂敷、キノコ柄のスタンプを使った包装も実にいい味が出ています。



ロブスターマッシュルーム01

ロブスターマッシュルーム
Hypomyces lactifluorum
(自生している写真などはこちら



これは日本で茸と戯れている僕のような人間からすると、かなり衝撃的な茸。食用ヒポミケスキンです。
ヒポミケスキンとは、他の茸に寄生する菌の一種で、もとの茸の周りをカビのごとく覆いかぶさり侵食し、全く別の形態となるのが特徴。
日本ではタケリタケというテングタケの仲間に寄生する種が知られていますが、そもそもその容姿、生態から食用を考えたこともない茸の一群でした。
しかしこのロブスターマッシュルームは、食用として親しまれているばかりか、カナダでは非常に人気があるらしく、市販もされているそう。


ロブスターマッシュルーム03

送っていただいたままの乾燥保存させた状態。
表面が粉っぽくざらついた感じがあり、赤みの強い色彩も強烈です。
そしてこの状態でしっかりと香ばしい匂いがします。


ロブスターマッシュルーム04

水で戻してみました。
切った状態で乾燥させてあるので、元の状態よりは小さいサイズなのですが、それでもかなりのボリューム感。
ロブスターマッシュルームはベニタケの仲間(Russula)に寄生するとのことですが、たとえばクロハツなどの大型のものに寄生すると当然大型になるということかもしれません。
凹凸状になっている部分は宿主のベニタケのヒダにあたる部分。
寄生された具合が生々しくわかります。


ロブスターマッシュルーム05

断面。
表面と中身の色が明らかに異なり、宿主となった元のベニタケの表面にオレンジ色のヒポミケスキンがついているのがよくわかります。
なお、戻した際の水は、しっかり色がつき濃厚な出汁が出ます。


ロブスターマッシュルーム02-b


野菜と一緒に調理してみました。
なかなか他のものに例えようがない独特な食感で、噛むとジュワっと旨みが感じられ、香ばしい香りが広がります。
チチタケやアカモミタケをはじめ、ベニタケの仲間はそれなりに食べたことがありますが、このような濃厚な旨みと食感は初めてです。
宿主となるベニタケは複数種あると思われ、ヒポミケスキンによって本来の味や食感がどのように保たれ、どのように変化しているのか興味深いところですが、一般的なベニタケの仲間とは一線を画した味わいとなっているのは確かです。
火を通してもしっかりとボリューム感が保たれていて、油との相性もよさそう。
出汁もよく出るので煮込み料理にもよいでしょう。
鮮やかな色彩も魅力的で、万能に使える食材なのではないかと思います。素晴らしい食菌です。
Eさん、ありがとう!


ところでヒポミケスキンは宿主となった茸が有毒である場合、やはりその毒性を受け継ぐのか、食べるべきではないというのが一般的な所見であるようです。
日本の代表的なヒポミケスキンであるタケリタケの場合、宿主は猛毒種の多いテングタケの仲間(Amanita)とされ、当然食用とはされません。
ロブスターマッシュルームはベニタケの仲間(Russula)に寄生しますが、そもそもベニタケは致命的な猛毒菌は少ないカテゴリーでもあり、もしかするとカナダのベニタケの仲間には有毒種が極めて少ないが故に食用種として親しまれているのかもしれません。
裏返せば日本のタケリタケも無毒のテングタケの仲間に寄生したものであれば、ひょっとしたら食用可能な個体があるのかもしれませんね…。
ちなみにこのロブスターマッシュルーム、Wikipediaには「日本にも分布している」との記述があります。
ただ日本にはニセクロハツのような猛毒ベニタケも自生しており、安易に食用にはできないと思われます。
なにはともあれ、この個性的なヒポミケスキン、ぜひとも自生している姿を拝んでみたいものです。

次回はカナダ産ノボリリュウタケについて紹介します。



***

ヒポミケス菌01

イグチに寄生したヒポミケスキン 2015年7月 愛知県


追記。
先日、イグチに寄生したヒポミケス菌に出会いました。
白いヒポミケスがイグチの笠の部分を覆っています。

ふと、匂いを嗅いでみたのですが、これが驚くことにロブスターマッシュルームと全く同じ、とても香ばしい香りがしました。
ヒポミケスキン特有の香りなのかもしれません。
ロブスターマッシュルームを食べて間もない頃合いに、日本のフィールドでこの匂いを嗅げるとは意外でした。
散策をしていても、ヒポミケスのついた茸は割とスルーしてしまうことが多かったのですが、今後はもっとよく観察してみようと思います。

  1. 2015/07/08(水) 23:12:33|
  2. きのこ|
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